神様修行はじめます! 其の三

「身に染み付いてしまったものは落ちぬ。ゴミをいくら洗ったところで、ゴミでしかない。門川当主よ、これで未来など、どうやって信じろと言う?」


言うのか? 信じろと。

こんな仕打ちをしておきながら、信じろと言えるのか?


惨い仕打ちの末に、やっとの事で訪れた反撃の時。

むざむざ捨てることなど到底できぬ。


千年前に信じた我らは騙され、奈落に落ちた。


そして再び信じろと? 信じて千年、耐えろと言うのか?


いつになるかは約束できぬが、それまでゴミのままでいろと?


・・・できぬ。

われ等とて・・・救われたい。


「我らはようやく報われ、癒されるのでおじゃる。 門川当主よ」



涙に濡れ、しゃくり上げる悲しい音が繰り返し響く。


子どものように泣き続けるその姿に、あたし達は無言だった。


身動きも、できなかった。


塔子さんと凍雨君は、言うべき言葉を失い沈黙するしかない。

絹糸は、心底辛そうにうな垂れていた。

しま子が、そんな絹糸を心配そうに見ている。


あたしは、惨たらしい事実を突きつけられた門川君を見ていた。


門川君は、良くも悪くも門川一族の御次男様。

一般人には雲の上の存在に等しい立場だ。


そんな彼はハッキリ言って、奴隷身分の一族の現状など、知る由も無かったろう。


特に鬼ババの奥方のせいで、自分が生き残る事だけで精一杯だったし。


彼は、知らなかったんだ。

だから恥じている。当主として。

だから。


「端境当主殿よ。それは・・・報いでも救いでも、癒しでもない」


お白粉の剥げた顔が、門川君を見つめた。