我らは、人生の全てを管理された。
衣服の生地の種類や、食事の菜や、汁の中身にいたるまで。
意思や理想を持つ事は許されず、権利も、選択も、自由も存在しない。
目の前にあったものは、門川から下される命令だけ。
端境は、なんにでも従った。従わされた。
従わなければ、生きていけなかったから。
日常の雑多な事から、門川の糞尿の始末まで。
戦場で死んだ者たちの遺体の回収も、われら端境の役目だった。
ちぎれた手足、飛び出た内臓。
『英霊たちに敬意を表し、素手で抱えて運べ』と言われ、死臭ただよう血まみれの臓物を手で掴み、運んだ。
「門川に・・・」
語り続ける麻呂の唇が震えて、怒りの表情がクシャリと崩れて、泣き顔になった。
「門川に命令された期限に間に合わせるため、時には、幼い子どもにまで惨たらしい臓物を運ばせた」
表情を失った幼い顔が、腐った臓を抱えて運ぶ。
臭いと血の染みこんだ体は、いくら洗っても元には戻らない。
それでも洗った。
必死に洗った。
湯などは贅沢品だから使えず、川の水で。
どんなに寒くても、川の水で懸命に洗った。
でも洗っても、洗っても、洗っても洗っても洗っても洗っても・・・
落ちない。
川の水の冷たさに体は芯まで冷え切り、凍え、痛みと辛さに耐え切れず、子ども達は泣き叫ぶ。
泣く子を洗う親もまた・・・泣いた。
共に泣きながら、我が子の穢れを落とそうと、必死に必死に洗い続けた。
「でも、落ちぬのじゃ・・・。どうしても、どうしても、落ちぬのでおじゃる・・・」
マロの目から次々と涙が落ちる。
頬のお白粉が涙で落ちて、たくさんの筋になった。
化粧が剥げて地肌が覗く。
その肌は平安貴族とは程遠い・・・日に焼けて、荒れた肌だった。
衣服の生地の種類や、食事の菜や、汁の中身にいたるまで。
意思や理想を持つ事は許されず、権利も、選択も、自由も存在しない。
目の前にあったものは、門川から下される命令だけ。
端境は、なんにでも従った。従わされた。
従わなければ、生きていけなかったから。
日常の雑多な事から、門川の糞尿の始末まで。
戦場で死んだ者たちの遺体の回収も、われら端境の役目だった。
ちぎれた手足、飛び出た内臓。
『英霊たちに敬意を表し、素手で抱えて運べ』と言われ、死臭ただよう血まみれの臓物を手で掴み、運んだ。
「門川に・・・」
語り続ける麻呂の唇が震えて、怒りの表情がクシャリと崩れて、泣き顔になった。
「門川に命令された期限に間に合わせるため、時には、幼い子どもにまで惨たらしい臓物を運ばせた」
表情を失った幼い顔が、腐った臓を抱えて運ぶ。
臭いと血の染みこんだ体は、いくら洗っても元には戻らない。
それでも洗った。
必死に洗った。
湯などは贅沢品だから使えず、川の水で。
どんなに寒くても、川の水で懸命に洗った。
でも洗っても、洗っても、洗っても洗っても洗っても洗っても・・・
落ちない。
川の水の冷たさに体は芯まで冷え切り、凍え、痛みと辛さに耐え切れず、子ども達は泣き叫ぶ。
泣く子を洗う親もまた・・・泣いた。
共に泣きながら、我が子の穢れを落とそうと、必死に必死に洗い続けた。
「でも、落ちぬのじゃ・・・。どうしても、どうしても、落ちぬのでおじゃる・・・」
マロの目から次々と涙が落ちる。
頬のお白粉が涙で落ちて、たくさんの筋になった。
化粧が剥げて地肌が覗く。
その肌は平安貴族とは程遠い・・・日に焼けて、荒れた肌だった。


