神様修行はじめます! 其の三

マロは蔑んだような目でこちらを見下ろしている。


今まで自分達が見下されてきた分を、全部返してやろうとする意思に満ちていた。


圧倒的に有利な立場で、彼は優越感に浸っている。


・・・でもねマロ! そーゆー頑なな態度って良くないと思うよ!?


お互い、理性を持って建設的な話し合いをしようよ!


ね、端境にとって悪い話をしようってんじゃないんだから!


「聞く必要など、ない。全ての決断も命令も、こちらに権利があるのでおじゃる」


「おじゃらないよ! そんな権利は無い! 世界の誰にも、どこにもない! 自分が世界の権利を握ってるなんて考えないでよ!」


「それを門川に言われる義理は無い」


「分かってるよ! だから皆で話し合おうって、いま言ってるんじゃん!」


マロの気持ちも良く分かる。

でもその気持ちに飲み込まれちゃダメなんだ!


「恨みや憎しみばかりを考えちゃダメ! マロも未来を信じてよ!」

「未来?」

「うん! これから皆で生きる未来だよ!」

「未来とは、いつの事か?」


蔑んだ表情を一切変えぬまま、マロの紅い唇が語る。


「十年か? 百年か? それとも再び千年待てと言うのでおじゃるか? その間なにひとつ変わらず、また皆が忘れ去るのでおじゃる」


「マロ・・・」


「なにもかも、千年前と同じように」



そうでおじゃる。
千年。
千年間、麻呂の血筋は端境一族の当主だった。


奴隷身分一族の当主。
道端のゴミ程度にしか扱われぬ一族の当主に、代々就任してきた。

ゴミの代表として生まれ、生き続けてきたのだ。


千年だ。
千年、そうして生きる事を強いてきたくせに、今さらそのゴミに向かって『未来を信じろ』と?