神様修行はじめます! 其の三

端境一族の今の立場を当然のように受け入れていたんだ。


その固定観念は不当であると、当然気が付くべきだったのに。


目の前に山積みの問題ばかりに心が逸り、その不当性に気付けなかった。


長年そうやって、端境は忘れ去られてきた。

誰にも顧みられない時間を過ごしてきた。


対処すべき懸案を見過ごし続けた事は、明らかに当主としての僕の罪だ。


だから、約束しよう。

端境一族の立場と名誉を、きっと回復すると。


正直、今すぐというわけにはいかない。

長い時間はかかると思う。


それでも僕は絶対に諦めない。絶対に途中で端境を放り投げたりしない。


ただ、その事と雛型の件は全く別物だ。


端境が、彼女個人の苦悩を引き合いに出すことは許されない。


彼女を、自分達の癒しの手段に利用してはならない。


其の罪と、この罪とは別だからだ。


「永久の言う通りじゃ。マ・・・端境当主よ。お前達は雛型という哀れな者を、自分の盾にしておるだけじゃ」


自分達の悲劇の象徴に祭り上げ、自分の主張の正当性に利用している。


それは、あまりに雛型が不憫。


そんな事をしなくても、もう、端境の声は届いたんだ。


「じゃから、のぅ、当主よ。もう雛型を解放・・・」


「聞く耳は持たぬ」


「・・・なんじゃと?」


「聞く耳は持たぬ。と言うたでおじゃる」


マロはくぃっと顎を上げ、薄目でこちらを見下ろした。


「門川の言い分主張など、何ひとつ聞く耳は持たぬ」