陰の篭もった低い笑い声が、扇の陰から漏れ聞こえる。
百も承知で乗ったって・・・。
じゃあお互い最初から、相手を利用してやろうと腹を探り合っていたわけ?
利用するだけ利用して、最後には殺してしまえばいいと?
なんて・・・陰惨な駆け引きだろう。
このマロは、あの恐ろしい蜘蛛の糸の術を、簡単に破ってしまったんだ。
つまり、それほどまでに彼は門川を恨み憎んでいる。
扇の上からじぃっとこちらを見据えている姿は、まるで千年前の端境の者が甦ったよう。
時を越えて、恨みを晴らしにきた亡霊の姿だ。
この平安の姿は、彼らにとっての誇りなんかじゃない。
それは怨嗟、怨念、呪縛の証。
千年間、積み重なった恨みの言葉として、門川に無言で見せ付けていたんだ。
あぁ・・・捕らわれている。
この人もずっとずっと、檻の中に捕らわれてしまっている。
生まれてこのかた一度も、癒されること無く・・・。
「千年前に門川が犯した罪、今ここで償ってもらおう」
その声には歓喜の色が含まれていた。
やっとの事で果たされる願い。
心底から感動しているんだろう。さぞ至福を感じているんだろう。
でもマロ、違うよ。
違うんだ。その喜びは・・・
「違う」
あたしが言ったのかと思うほど、あたしの心の声にピタリと合った、門川君の声だった。
彼はマロを見つめながら、再びハッキリ言い切った。
「それは違う」
百も承知で乗ったって・・・。
じゃあお互い最初から、相手を利用してやろうと腹を探り合っていたわけ?
利用するだけ利用して、最後には殺してしまえばいいと?
なんて・・・陰惨な駆け引きだろう。
このマロは、あの恐ろしい蜘蛛の糸の術を、簡単に破ってしまったんだ。
つまり、それほどまでに彼は門川を恨み憎んでいる。
扇の上からじぃっとこちらを見据えている姿は、まるで千年前の端境の者が甦ったよう。
時を越えて、恨みを晴らしにきた亡霊の姿だ。
この平安の姿は、彼らにとっての誇りなんかじゃない。
それは怨嗟、怨念、呪縛の証。
千年間、積み重なった恨みの言葉として、門川に無言で見せ付けていたんだ。
あぁ・・・捕らわれている。
この人もずっとずっと、檻の中に捕らわれてしまっている。
生まれてこのかた一度も、癒されること無く・・・。
「千年前に門川が犯した罪、今ここで償ってもらおう」
その声には歓喜の色が含まれていた。
やっとの事で果たされる願い。
心底から感動しているんだろう。さぞ至福を感じているんだろう。
でもマロ、違うよ。
違うんだ。その喜びは・・・
「違う」
あたしが言ったのかと思うほど、あたしの心の声にピタリと合った、門川君の声だった。
彼はマロを見つめながら、再びハッキリ言い切った。
「それは違う」


