神様修行はじめます! 其の三

きっかけがあったんでしょう?

長老のババが、耳打ちしたんじゃないの?


雛型を利用して、端境の結界術を利用して、謀反を起こせと。


まったくと言っていいほど勢力をもたない、新たな当主の誕生。


これは千載一遇のチャンス。


新当主を今のうちに完全に押さえ込み、世界を思うままに支配する。


今こそ、端境一族が積年の恨みを晴らし、世界の王となる好機だと。


・・・ババはきっと、そんな甘言を吐きながら、心の中では舌なめずりをしていたんだろう。


そして密かに、蜘蛛の糸を張り巡らし始めた。


気付かぬうちに蜘蛛の巣は、縦横無尽に用意され、まんまと獲物は踏み込んでしまう。


そして証拠は闇の中。


唯一の証人の端境一族は、大罪人として裁かれる運命。


大罪人に弁解は一切許されず、一族揃って処刑されて、消え去るのみ。


使用済みの駒は、捨てられるだけだ。


「だから、こんな事しちゃダメ! 長老ババの計略に嵌っちゃダメなんだよ! ・・・思いっきり嵌ったあたしが言うのもなんだけど!」


「いかにも、あの長老の女性が麻呂に接触してきた」


「やっぱり!? じゃあ・・・」


「だが、麻呂は術に嵌ってなどおじゃらぬ。嵌るはずが無い。なぜなら・・・」


マロの歪んだ目が、冴え冴えと光った。


「端境一族が再び天下を取るために・・・などと、門川の長老が本気で言うはずがあるまい」


「・・・え?」


「他の一族ならば騙せても、千年門川の本性を見続けた我が一族が、騙されるものか」


「あ・・・じゃあ・・・」


「百も承知で乗った。ただし最後に笑うは我ら。糸に捕らわれ果てるは、門川におじゃる」