神様修行はじめます! 其の三

なんであんたがここで出てくる!?

せっかく雛型へ、心を込めたメッセージを送ってたのに!

懸命に訴え続けたあたしが、丸きりバカみたいじゃないの!

滲んだ涙も引っ込んだわよ! お前が引っ込め! お前が!


「なるほど、これが噂のマロね。よく分かったわ」


塔子さんが納得顔をしながら頷いた。

そりゃもう、一発で理解するだろう。この顔見たら誰でも。


マロは相変わらずのマロ眉、マロ化粧で、マロ衣装に身を包み、赤い布を背にして立っている。


塔子さんが一歩前へ踏み出し、そのマロ顔に向かって言い放った。


「あなたが端境一族当主のマロね?」


「マロ、ではない。典雅(てんが)におじゃる」


「別にどちらでもいいわ。あなたに用は無いのよ。雛型を出しなさい。隠し立てすると容赦しないわ」


腕組みしながら問答無用の口調で言い立てる、迫力満点な彼女に対してマロは・・・


「そなた」

「なによ?」

「なぜそのように、はしたない格好をしておじゃるか?」

「好きで肌襦袢一枚しか着てないわけじゃないわよ!」

「寒くはないのか?」

「寒いわよ! 正直言ってすごく!」

「なれば、何か着れば良いでおじゃろうに」

「関係ない話はやめて! あなたに用は無いと言ったはずよ!」

「麻呂とて、そなたに用など無い」


マロは扇を取り出し、口元を覆う。

白く塗られた顔の一重の目が、真っ直ぐ門川君を見ていた。