神様修行はじめます! 其の三

だから雛型、出てきて。

出てきてくれなければ癒されない。

あなたの苦しみは増すばかりだ。

そんなのあたし、嫌だ。嫌なんだよ。


「出てきて雛型。お願いだからもう、癒されて」


あたしがどんなに呼びかけても、雛型が出てくる気配は無い。


微動だにしない布を見つめる両目が、涙で滲んだ。


「ねえ、雛型。お願いだから答えて、雛型」


・・・ごめんね。『雛型』なんて呼んで欲しくないよね?


でもあなたの名前、知らないんだ。

だから教えてくれるかな?

あなたの名前、呼びたいよ。


あたしに呼ばせて。触れ合わせて。抱きしめさせて。


あたしの名前も教えるよ。ここにいる全員の名前も教えるから。


あなたを責める人はいなくても、あなたを癒したいと思う人は、いる。

ここに、いるんだ。こんなにも。

だから・・・


「だから出てきて。雛型」


― ふわり・・・


赤い布が動いて、ようやく中から人が出てくる気配がする。


あぁ、雛型!

やっと、やっとで・・・!


「ついに、ここまで来たでおじゃるか」


・・・・・・

お前かマロ!!