そしてあたしは勢いよく立ち上がって、端境の人達に向かってペコリと頭を下げる。


今はこの人たちにかけられる、的確な言葉が見つからないけど、せめて意思表示をしたかった。


『あたし、頑張りますから』って。


世界を救うのはもちろんのこと、端境一族のこれからの事とか。


あたし達が、どんな風に未来を築いていくのか、とか。


ちょっと色々と複雑すぎて言葉にできないから、せめてもの決意表明として、心を込めて頭を下げた。


頑張るよ。

とにかくあたし、頑張るから。

だからもうちょっと待っててね。もう少しだけ。

きっとあなた達を助けるから、だから・・・


「あのお母さんの事、よろしくお願いします」


息子の遺体に寄り添って、泣き続けるお母さん。


どうかあの人の悲しみに、皆で寄り添ってあげてください。


あたしの心の声が聞こえたように、何人かがあたしに向かってしっかりと頷いてくれた。


それを見て安心して、あたしは進行方向へ目を向ける。


高くそびえる木々の間に続く一本道。
この先に雛型がいる。
千年もの間、癒されずに苦しみ続ける人が。


絹糸が真っ先に走り出し、次いで塔子さんが走り出す。


端境に対して心残りな様子の凍雨君も、意を決したように走り出した。


しま子も数歩先を行き、そこで立ち止まってあたしを待っている。


門川君も無言のまま、あたしと同じように端境に向かって頭を下げた。


途端に、一族に強い動揺が走る。


今まで奴隷身分の自分達に頭を下げる人なんて、誰もいなかったんだろう。


ましてや彼は、門川の当主だ。


でも彼にとっての、今はこれが最大限の意思表示。そして強い強い、決意の表れ。


とても言葉にできないほどの、大きな、大きな決意の証として。