神様修行はじめます! 其の三

端境の一族達は、晴れやかな凍雨君とは対照的に、重々しく静まり返っていた。

凍雨君と門川君の姿を、食い入るように見つめている者。
俯いている者。
すすり泣いている者。
ギュッと唇を結び、視線を逸らしている者と、様々だ。

・・・簡単には、いかないんだと思う。

凍雨君の意思を理解して、その価値も分かってはいるのだろうけれど。


だからといって、自分達もそれに追随するか・・・というと、それはまた別の話で。


その感情は無理もない事だと、今なら分かる。


さっきはあたしも売り言葉に買い言葉というか、完全に我を忘れて、争いの火に油を注ぎまくったけど。


……元々、売られたケンカは高額買取しちゃう性格だから。


でも人間、そんな簡単にコロコロ気持ちを入れ替えられたら苦労は無いし、裁判所もいらない。


千年の間、誰にも顧みられることの無かった一族。


門川を責めるより他に、慰めを見つけられなかった人達。


千年の絶対的価値観ってヤツは、そう簡単には変わらない。


深い傷を癒すには膨大な時間がかかる。・・・凍雨君の言う通りだと思う。


なら、無理しなくていいよね?


無理なんかしたら傷口が開いちゃうよ。


時間がかかるなら、時間をかければいいだけの話。


うん、時間はあるんだ。世界が滅びてしまわない限りね。


だから、救いに行かなければならない。


世界を。


そして、未だ慰めを見つけられず、独りで絶望の淵に沈み込み続ける雛型を。


端境が、雛形が、世界中の誰もが、ゆっくりと癒される時間と場所を守るために。


「行こう」


門川君が仲間達の顔を見回す。

あたし達は深く頷き合って、先へと進み出した。


「どうかお待ちを。門川当主様」