神様修行はじめます! 其の三

端境一族の人達は、揃って凍雨君の姿を見つめている。


まるでこの場の全員が、ひとつの塊に同化してしまったかのように。


一族の間に漂う気配はどこまでも悲しく、辛い。


でも、凍雨くんに注がれる視線はとても穏やで、仄かに優しさも滲んでいる。


あぁ、そうか、これは・・・


癒し、だ。


端境は凍雨君に共感している。

彼の言葉を聞いて、魂を揺さぶられている。


凍雨君の言葉はそのまま、彼等にとっての心の声なんだ。


境遇の違いこそあれ、氷血一族の苦しみと彼等の苦しみは、同じ。


今まで他の誰にも、絶対に理解してもらえなかった苦悩。


それをそっくりそのまま、まさか他一族の口から聞くことができるとは。


行き場のなかった思いの行き先が、初めて・・・初めて、見つかって。


その事実を、しっかりと心の中に受け止めて。


彼等は今、初めて癒され、救われている。


「そして時は流れて、僕はここに居る。永久様の隣に」


淡雪様は、今は亡く。


永守様も、華子様も逝ってしまわれた。


もう、どこにも誰もいない。


・・・時は流れてしまうのだと、僕は知った。


どんなに恨んでも、憎んでも、たとえ許しても、許さずとも。


人と、人の犯した罪を置き去りにしたままで、時は流れてしまう。


だから僕は、信じようと決意した。


未来を・・・信じてみようと。