神様修行はじめます! 其の三

大人たちは、事あるごとに口にする。

全ては淡雪の、そして永久のせいと。

何も事情を知らぬ子ども達は、その言葉を深く胸に刻み込む。

悪いのは全部、淡雪と永久のせいだと信じていく。


「でも、本当はみんな知っているんだ」


淡雪様も、永久様も、悪くない。

分かってる。ちゃんと心の底では分かってる。

でも、なにかを責めずには、とてもいられなかった。


誰かのせいだと、恨まずにいられなかった。


せめて、そうでもしなければ、あまりにも・・・


生き残った者達が、そして氷の下の仲間達の姿が、哀し過ぎて・・・。


「門川を、奥方の華子様を責めたとしても、どうにもならなかったから」


太刀打ちできない事なんか、分かりきっていた。


どんなに恨んでも、どんなに責めても、強大な門川には何ひとつ通用しない。


こんなに苦しめられながら、責める事すらできないなんて辛すぎる。


だから・・・簡単に責められる相手を選んだ。


淡雪様も、反論するようなお方ではなかったのだろう。


じっと黙って、自分の一族からの怨嗟の責めを受け続けた。


積もり積もった恨みと憎しみを、吐き出せる。

吐き出した物の行き場がある。

『これは全部、お前のせいだ』と、堂々と憎しみをぶつけられる相手がいる。


それに救われて・・・


「そうやって氷血一族は、今日まで必死に生き延びてきたんだ」



凍雨君の独白に、誰も何も言わなかった。


悲しい空気に押し潰されたように皆、押し黙っていた。