神様修行はじめます! 其の三

門川を・・・

否。

淡雪(あわゆき)を、そして、生まれた永久を責めた。


淡雪が、門川当主の愛人にさえならなければ。

永久が、この世に生まれさえしなければ。

自分達は、こんな目にあわずに済んだのに。


我ら一族の悲劇は全部……全部、あのふたりのせいだ。


昨日まで助け合って暮らしていた者同士が、今日は一握りの穀物の為に争い合う。


常にどこかで誰かが争って、平穏な日など一日も無かった。


飢えた母親の乳が足りずに、赤ん坊が死ぬ。

体力の無い幼子が死ぬ。

年寄りが死んでいく。


そして、飢えのあまりに人を殺して、食う。

増え続ける氷棺。冷たく氷漬けにされた仲間の姿。


でも・・・ぼく達は何もできない。


大切な家族が飢え、衰弱し、あげく寒さに凍えて死んでいく。

それを、指をくわえて見ているだけ。


かりにも、『誇り高き氷血の一族』と呼ばれた者達の末路が、よりによって凍死。


それが・・・それが我ら一族にとって、どれほどの屈辱である事か!


だから、責めた。

恨んだ。どこまでもどこまでも憎んだ。

この原因となった淡雪を。永久を。

全ては、あのふたりのせいだと。