神様修行はじめます! 其の三

「端境の者よ、言いたくなければ雛型の居場所、無理に聞き出そうとは思わぬ」


絹糸が男達に向かって話しかけた。


「簡単に口は割れぬであろうからのぅ」


彼等にとって雛型の居場所を教えるのは、裏切り行為。


確かに簡単に教えるわけにはいかないだろうけど・・・。


「でも絹糸、聞き出さなきゃ世界が・・・」


「敷地内に入った故、我が何とか気配を読めるであろう。時間はかかるが」


「・・・間に合う?」


「世界が持ちこたえてくれるのを信じるよりあるまい」


「うん・・・そうだね」


信じよう。そしてやるべき事をしよう。


ここでこうしているより、先に進まなきゃ。


世界を救いにいかなきゃ。


「皆、行こう。世界を救いに」


門川君がそう言って立ち上がった。


端境の術師がそれを見てせせら笑う。


「世界を救う? ご大層なことだ。英雄にでもなるつもりか?」


「なにをしたところでお前は英雄などにはなれぬぞ」


「そうだ。しょせんお前は偽者の王者なのだからな」


「真の王者とは、我ら端境一族なり」


・・・・・・


どうしよう。やっぱムカつくんですけど。


眉間にガッツリ皺の寄ったあたしの顔を見て、絹糸がパタパタと肉球で靴を叩く。


分かってるよ。ちゃんと押さえるよ。だから早くここから移動しよう。


あたしの怒りが本気で暴走したら、大量虐殺になっちゃいそうだし。


そしたらこっちこそテロリストになっちゃう。


立ち去りかけたあたし達と擦れ違いざま、術師のひとりが声をかける。


「忘れるな。門川の犯した罪は永遠に消えぬぞ」


ひくっと眉間に皺が寄り、チリッと腹の奥が燃える。


い、いけないいけない。行き着く先はテロリスト。


落ち着けあたし。えーっと、ヒツジが一匹ヒツジが二匹・・・