神様修行はじめます! 其の三

「私の夫は・・・無事なの?」


女性たちの集団の中から不安そうな声が聞こえた。


「私の夫も結界を張るための要員に・・・」

「私の息子も」「うちの娘も」


最初の声を皮切りにあちこちから不安そうな声が出始める。


皆、いてもたってもいられないようにオロオロし始めた。


「あの、門川当主様、私の夫を知りませんか?」

「わ、私の夫は見ませんでしたか?」


家族の安否を気遣う人達が次々と立ち上がり、門川君の元へ駆け寄ろうとした。


「待てお前達! 動くな!」


それを男達が両手を広げて押し留める。


「こやつは彼等が宿敵、門川の当主なのだぞ! 敵に擦り寄るなど言語道断!」


止められた家族達はそれぞれの顔を見合わせた。そして気まずそうに視線を逸らす。


でも今にも泣きそうな顔だった。


門川君と絹糸がそんな彼等に説明する。


「申し訳ないが、僕達が見つけた術師は彼だけだった」


「それぞれが優秀な結界術師ならば、個々で身を守っているやもしれぬぞ」


「そうだな。安易な事は言えないがその可能性はある」


門川君と絹糸の会話によって、不安に駆られる人々の顔にわずかな希望が見えた。


どんな小さな希望でも、何も無いよりほど良い。


その小さな明かりを灯してくれた門川君に、皆が縋るような表情を向ける。


門川君は静かに、でも力強く頷いた。


「僕がきっとこの事態を収める。どうかもうしばらくの間、耐えてくれ」


「門川当主様・・・!」


「当主様、どうか我々をお救い下さい!」


「なにとぞ、なにとぞお慈悲を!」


「お前達、何を言っている!? 気は確かか!?」


男達が声を張り上げ罵倒する。


「門川の言う事を信じるつもりなのか!? この愚か者めらが!」