神様修行はじめます! 其の三

その姿を見ながら、さっきからあたしの頭はずっと重苦しい問題を考えていた。


どうしよう。事情、説明するべき?


この術師の最期を知っているのはあたし達だけ。


真実を知っているのも、説明できるのもあたし達だけ。


でも何て言う?


「お宅の息子さんは、敵に操られて自分で結界解いて、それで異形のモノに襲われて死にました」って?


・・・言えないよ。とてもじゃないけどそんなの。


しかもその「敵」ってのが門川の長老だよ。


そんな事実を今ここで暴露なんかしようものなら、結果は火を見るよりも明らかだ。


じゃあ隠す? 

何も言わずに知らん振り?


事実がバレたら自分達にとって都合が悪いから?


世の中知らない方が良い事もあるのは分かるけど、それとこれとはちょっと違う気がする。


息子の死なんて重要な事の裏にある事実を、隠されたままにされているのが本当に「良い」ことなのかな?


でも、だからといって・・・。


落ち着かない気持ちでチラチラと動かす視線が、絹糸と門川君のそれとカチ合う。


ふたりはあたしの気持ちを見抜いて無言のまま答えを出した。


『なにも言わなくていい。・・・今は』


ふたりの目はそう語っていた。


・・・

・・・・・・


うん。そうだね。

今は言わなくてもいい。


この先、母親がそれを望んだならその時に伝えればいい。


知るか、知らないままでいるかは母親自身が決める事。


その判断は彼女だけのものだ。


何事にも最良な時期というものがある。それを間違えてはいけない。


それによって母親は救われる。


門川君と絹糸は、せめてそうしてこの人を守ろうとしているんだ。