門川君がゆっくりと近づく。
慰めるように片手を、慟哭する母親の丸い背中に乗せた。
涙に濡れた母親が顔を上げる。
「か、門川当主様っ!」
そして彼の白い衣装の襟を鷲掴みにした。
「どうか、どうか息子を生き返らせて下さりませ!!」
振り回さんばかりの勢いで強く強く引き寄せる。
「ただひとつの望みでございます! 息子が生き返るなら、老いた私の命などいりませぬ!」
泣き声と喚き声が混じり合って、とても明瞭には聞き取れない。
それでも激しい感情をほとばしらせて母親は願いを訴える。
諦めきれない・・・願いを。
「門川当主様は、人にあらざる力を有すると聞き及んでおります! どうかお慈悲を! お力をぉぉ!」
極限まで見開かれた両目が門川君を凝視する。
わななく頬へは涙が次々と零れ落ちた。
絶望的な望みに縋る、一縷の望みに賭けた人間の、なりふり構わぬ絶叫。
接触するほど間近で母の狂気を見た門川君は、目を逸らさず、こう言った。
「無理だ」
母親はヒッと息を飲む。まるで無残に呼吸を止められたかのように。
「そんな力は僕には無い。あればいいのにと、今まで何度も渇望したけれど」
「・・・」
「無いんだ。何度も、何度も、何度も何度も望んだけれど・・・」
「・・・・・・」
「無いんだ」
何度も何度も。幾人も幾人も大切な命を失ってきた。
そして自分は生きていく。
逝く者は行き、遺される者は残される。ただそれを繰り返す。
そのたびに彼は、苦しいほどの自分の無力を感じていたのかもしれない。
「だから僕も・・・今のあなたと同じだ」
門川君の言葉に、母のノドから嘆きが漏れる。
振り絞るような悲しい声を張り上げ、望みを絶たれた彼女は再び死した息子の体にしがみ付いた。
慰めるように片手を、慟哭する母親の丸い背中に乗せた。
涙に濡れた母親が顔を上げる。
「か、門川当主様っ!」
そして彼の白い衣装の襟を鷲掴みにした。
「どうか、どうか息子を生き返らせて下さりませ!!」
振り回さんばかりの勢いで強く強く引き寄せる。
「ただひとつの望みでございます! 息子が生き返るなら、老いた私の命などいりませぬ!」
泣き声と喚き声が混じり合って、とても明瞭には聞き取れない。
それでも激しい感情をほとばしらせて母親は願いを訴える。
諦めきれない・・・願いを。
「門川当主様は、人にあらざる力を有すると聞き及んでおります! どうかお慈悲を! お力をぉぉ!」
極限まで見開かれた両目が門川君を凝視する。
わななく頬へは涙が次々と零れ落ちた。
絶望的な望みに縋る、一縷の望みに賭けた人間の、なりふり構わぬ絶叫。
接触するほど間近で母の狂気を見た門川君は、目を逸らさず、こう言った。
「無理だ」
母親はヒッと息を飲む。まるで無残に呼吸を止められたかのように。
「そんな力は僕には無い。あればいいのにと、今まで何度も渇望したけれど」
「・・・」
「無いんだ。何度も、何度も、何度も何度も望んだけれど・・・」
「・・・・・・」
「無いんだ」
何度も何度も。幾人も幾人も大切な命を失ってきた。
そして自分は生きていく。
逝く者は行き、遺される者は残される。ただそれを繰り返す。
そのたびに彼は、苦しいほどの自分の無力を感じていたのかもしれない。
「だから僕も・・・今のあなたと同じだ」
門川君の言葉に、母のノドから嘆きが漏れる。
振り絞るような悲しい声を張り上げ、望みを絶たれた彼女は再び死した息子の体にしがみ付いた。


