神様修行はじめます! 其の三

門川君がゆっくりと近づく。


慰めるように片手を、慟哭する母親の丸い背中に乗せた。


涙に濡れた母親が顔を上げる。


「か、門川当主様っ!」

そして彼の白い衣装の襟を鷲掴みにした。


「どうか、どうか息子を生き返らせて下さりませ!!」


振り回さんばかりの勢いで強く強く引き寄せる。


「ただひとつの望みでございます! 息子が生き返るなら、老いた私の命などいりませぬ!」


泣き声と喚き声が混じり合って、とても明瞭には聞き取れない。


それでも激しい感情をほとばしらせて母親は願いを訴える。


諦めきれない・・・願いを。


「門川当主様は、人にあらざる力を有すると聞き及んでおります! どうかお慈悲を! お力をぉぉ!」


極限まで見開かれた両目が門川君を凝視する。


わななく頬へは涙が次々と零れ落ちた。


絶望的な望みに縋る、一縷の望みに賭けた人間の、なりふり構わぬ絶叫。


接触するほど間近で母の狂気を見た門川君は、目を逸らさず、こう言った。


「無理だ」


母親はヒッと息を飲む。まるで無残に呼吸を止められたかのように。


「そんな力は僕には無い。あればいいのにと、今まで何度も渇望したけれど」


「・・・」


「無いんだ。何度も、何度も、何度も何度も望んだけれど・・・」


「・・・・・・」


「無いんだ」


何度も何度も。幾人も幾人も大切な命を失ってきた。


そして自分は生きていく。


逝く者は行き、遺される者は残される。ただそれを繰り返す。


そのたびに彼は、苦しいほどの自分の無力を感じていたのかもしれない。


「だから僕も・・・今のあなたと同じだ」


門川君の言葉に、母のノドから嘆きが漏れる。


振り絞るような悲しい声を張り上げ、望みを絶たれた彼女は再び死した息子の体にしがみ付いた。