神様修行はじめます! 其の三

絹糸は沈黙を保ったまま、そんな母親の視線を受け止めていた。


まるで絹糸を責めているかのような視線を、ただ黙ってじっと受け止めている。


ピクリとも動かず、黄金の瞳も瞬きもせず。美しい剥製のように。


千年・・・。

千年、人の死を見つめ続けた黄金の瞳。


数知れない神の末裔たちの最期の願いを背負い続けた瞳。


重すぎるほどのその黄金の色に、母の姿が映りこむ。


絹糸の目を睨みつける母親の、険しいだけの表情。


それがふと・・・崩れた。


金の瞳の奥に何かを見つけたように。


その向こうにある、とても大きな哀しいものに、ようやく気がついたように。


絹糸の視線が母親から術師に移った。


つられたように母親も息子の姿を見る。


土気色に変わってしまった肌の色。


血に濡れた手の、動かない指先。


艶やかな色も、温もりも、鼓動も、生きていた頃に有ったもの全てを失ってしまった姿。


それは、亡き骸。


もはや変わり果てた姿。でも・・・


それでも、母にはさぞ・・・愛しかろう。


溢れるほどに愛しかろう。


だから、

愛しているからこそ・・・


もはや息子は、生きてはいないと思い知る。


変わってしまった姿に、もう息子の命は消え去ったのだと思い知る。


かけがえのない、大切なものは抜け落ちてしまったのだと。


もう、ここには無いのだと。


ただ『無い』という現実が存在するだけなのだと。


この世でたったひとりの息子の死を、この世でたったひとりの母だからこそ・・・


認めなければならぬのだと。


老いた母の口から、絹を割くような細い声が漏れた。


糸を引くように細く長く響くその音は、やがて、心を引き裂く慟哭となり。


置き去りにされた母親は、息子の亡き骸に覆い被さり・・・


泣き崩れた。