神様修行はじめます! 其の三

「しかも自分自身が殺される事を受け入れるなんて!」


「君だって似たような状況だったろう」


門川君の、ようやく合点がいった表情。


「言ったろう? 蜘蛛の糸は強力な言霊師が使えば最強無比なんだ」


・・・確かに。


あたしはあの時の自分の心理状況を思い出す。


自分が雛型にならなければならぬと、どこまでも激しく強烈に信じきった心の内を。


あたしはそれを自分で納得して、決意したんだ。


それにしたって、あの時は門川君のためと思って決意したことだ。


彼の幸せのためと思って。


この術師にだって大切な人のひとりやふたり、いるはずだ。


その人達の命までも、自分の手で一族もろとも奪い去る事を納得して決意するなんて。


そんなことまで、させる事ができるなんて。


あたしは今さらながらにゾッとした。


なんて恐ろしい術師なんだろう。


そんな人が、あたし達に敵対しているっていうの?


「でもぼく、理解できません」


凍雨君が敵の団体を警戒してそちらに体を向けつつ、視線だけをこちらに向ける。


「なんだってそんな事するんでしょうか?」


そうだ。あたしのケースはまだ理解できる。


あたしを利用して、この未曾有の危機を救おうとした。


でもこの術師の場合は? 危機の発端である端境への報復なの?


・・・いや。

危機の発端が端境なら、危機を収束できるのも端境だ。


新たな雛型作成が閉ざされた今、それしか道が無い。


なのにその一族を全滅させてどうするの?


理由が見えない。まったく分からない。


「考えられる答えはひとつじゃ。のぅ、永久よ」


「そうだな。これで確信できた」


なにが?


あたしは門川君の顔を見た。


塔子さんも凍雨君も、敵の方を見つつもこっちを気にしている。


門川君の全員の視線を受け、その答えを口にした。


「つまり、あの長老達が今回の全ての黒幕なんだよ」