神様修行はじめます! 其の三

だから何が?って聞いてんのに!


息も絶え絶え。もはや目は光を失いかけている。


虚ろでボンヤリした表情で、ろくに意識も無さそうなのに頑迷に拒否し続ける術師。


・・・・・・

なんか、おかしい?


あたしは気がついた。


いや、自分の救命作業を固辞し続ける時点で、すでにこのひと立派におかしいんだけど。


なんだか様子が変すぎる。表情や目が。


そう。目だ。目付きがおかしいんだ。


なんだろう? 

うまく説明できないけど怪我のせいで意識朦朧というより、これは・・・


「意識を操られておるようじゃの」


絹糸が術師の目を覗き込み、確信するように言った。


え? 操られている?


死を望むように催眠術でもかけられてるってこと?


「ふむ、催眠というよりも・・・」


絹糸は術師の真正面で目を合わせ、問いかけた。


「なぜ、ならぬのか?」


「・・・・・・」


「答えよ。なぜ、ならぬ?」


「ならぬ事は、ならぬまでの事」


「ではなにが、ならぬのじゃ?」


「全てが」


「全てとは?」


「全て。結界を張ることも、命を救おうとする事も、救われる事も・・・」


どこを見ているのか分からない視線で、術師は言い続けた。


「全てが、ならぬ。この世の全てが、ならぬのだ」


この世の全てが、ならぬ?


一体なに言ってんの? この人。完全に意味不明。


っていうか、結界を張っちゃダメってどういうことよ?


もしかしてそのせいで端境の結界が破られたってこと?