神様修行はじめます! 其の三

「さあ、来るなら来なさい! まとめて相手してやろうじゃないの!」


チョイチョイと塔子さんが指先で「おらおらカモ~ン」する。


凄んだ表情は本当に頼もしくて、その男らしさにホレボレするほどだ。


女なんだけど。


猿たちは突然現れたあたし達を警戒して様子を伺っているみたい。


今のところ襲い掛かってくる感じは無い。

知恵もあるんだろうか?


その隙に門川君が術師の怪我の具合を確認する。


あたしも敵を警戒しつつ、横目で見た。


・・・ひどい。全身血まみれだ。


あちこち体の肉を食いちぎられているんだろう。


目は虚ろで朦朧としてしまっている。


でも、まだ生きてる。門川君なら助けられる。


門川君が治癒するために印を組もうとした。


するとその手を・・・


「・・・ならぬ」


なんと当の術師本人が彼の手を掴んで、印を組むのを邪魔し始めた。


ちょ、ちょっと? なにやってんのあんた?


「ならぬ、じゃないって。それじゃ印が組めないでしょ?」


「ならぬ・・・ならぬ・・・」


「君、大丈夫だから手を退けたまえ。いま僕が治すから」


「ならぬ・・・」


「傷は内臓まで達している。一刻も早く施さなければ君は助からないぞ」


門川君がいくら言っても、ならぬならぬの一点張り。


慌ててあたしが術師の手を引っ張ろうとしても、頑として言う事を聞かない。


死にかけている体で、どこにこんな力が?と思うほどに本気で抵抗してくる。


ちょっと! なにをそんなに必死に自分の救命活動の邪魔してんのよ!?


これじゃ文字通りの「必死」だわ! あんた分かってやってんの!?


「治癒しないと死んじゃうんだってば!」


「ならぬ・・・ならぬ・・・」


「だから、なにがならぬのよ!?」


「ならぬのだ・・・」