神様修行はじめます! 其の三

「アレクサンドロヴィチ3世! カモメちゃん! あそこに向かって!」


よしきた! と言わんばかりに亀が揃って飛行する。


あたし達は急降下していった。


術師の体は、毛むくじゃらの異形のモノに覆われて見えなくなってしまってる。


抵抗している気配も感じない。


意識を失っているんだろうか!? 早く助けなきゃ殺される!


凍雨君と塔子さんがヒラリと亀から飛び降りた。


あたしとしま子も絹糸の背から飛び降りる。


「うおおぉぉっ!」


空中で気合一発! 塔子さんが拳を振り上げ身構える。


凍雨君が冷気と共に素早く印を組んだ。


しま子の鋭い爪がキラリと輝き、あたしの両目は異形のモノの黒い渦を的確に捉える。


「でりゃああぁぁ!」


塔子さんの右が異形のモノを吹っ飛ばす。


凍雨君の氷の膜が相手を瞬間凍結させた。


しま子の爪は肉深く切り裂き、傷口から緑色の体液が噴き出す。


そしてあたしの真っ赤な炎が敵を飲み込み燃え上がる。


皆、同時に瞬殺!


あたし達の手によって、術師に襲い掛かっていたモノたちは一瞬で倒されてしまった。


よおぉーっし!


ガッツポーズのあたしは、周囲を取り囲んでいる異形のモノ達を睨み付けた。


かかってくる!? 言っとくけどかなり手強いよ! あたし達は!


全身、頭から足元まで灰色の長毛に覆われている姿。


顔や、毛から覗く手足の指の色は赤い。


皮膚のシワは深く、鼻は垂れ下がるほどに巨大で、奇妙に面長で。


これは、この姿は・・・・・


猿か?

猿だ。日本ザルにすごく似ている。鼻はやたらデカイけど。


体格はまちまちだけど、ほぼ人間並み。


みんな犬歯を覗かせてこっちを威嚇している。