神様修行はじめます! 其の三

炎の巨大な壁が渦巻いている。


文字通り、渦を巻いて天に轟々と舞い上がっているんだ。


空を黒く染めるほどの大群を、それに負けない巨大な炎の舌が、舐め尽すように燃え盛る。


その圧巻の爆炎の饗宴。

業火の支配。


鳥たちは苦痛に身悶えし、紅蓮の炎の中で成すすべも無く燃え尽きていく。


その光景を、それこそ成すすべも無くポカンと見上げるあたし。


「これは・・・なに?」


「なにって、お前の滅火の炎であろうが」


「あたしの? あたしがやったの?」


「なんじゃ、やはり自覚無しか」


だって・・・これほどの巨大な炎は今まで出したことが無い。


今まではパーソナルな分量の滅火の炎ばかりで。


なのにこれは、鳥たち全部を滅して余るほどの爆炎だ。


我ながら唖然、呆然。


「良かったな。無事にトラウマを克服できて、めでたしめでたしだ」


「門川君?」


「ここまで徹底的に叩き潰しておいて、今さら鳥が怖いも無いだろう?」


「・・・・・・う、うん」


確かに。

もう今さら、トラもウマも無いっていうか。


指先ひとつでひねり潰しておいて、「いや~ん怖い!」は無いよ。


クチバシ恐怖症は立派に解消したっぽい。


じゃあ・・・。


「あたしのトラウマを克服させる為に、わざと?」


「今後、クチバシを見るたびヒステリーを起こされては困るからな」


「あ・・・」


「君は生涯、僕のそばに居るのだろう? 共に戦うなら弱点は随時、克服してもらう」


「・・・・・・・」


・・・そう、か。うん、そうだね。


門川君の言う通りだ。


あたしは彼の護衛役なんだから、あれは苦手、これは嫌いじゃ通らない。


彼はあたしの今後を見据えて、本当の意味で手助けをしてくれたんだ。


それはありがたい事だと思う。


思うよ。