神様修行はじめます! 其の三

― ポイッ ―

塔子さんが扇を手から放り投げた。


扇子が風に揺れ、パサッと雪の上に落ちる。


・・・・・・・・・へ?


扇、捨てちゃう、の?


・・・・・・


ちょっと塔子さんーっ!?


なにしてんの!? 扇捨てちゃったら戦えな・・・!


「うおおぉぉぉぉ―――――!!」


塔子さんの紅い唇から野太い雄叫びが響いた!


ひえぇっ!? な・・・な・・・!?


塔子さんは着物の裾を大きく開き、両足を開いてグイと踏ん張る。


襦袢の薄桃色と白い足が大胆に覗いた。


羞恥する様子も無く、腰をグッと落とし、固く拳を握り締め・・・


「でりゃああぁ―――!」


彼女は素早く右ストレートをトカゲ兵隊に向けて放った!


強烈な拳はトカゲに命中。


バゴッ!と鈍い音と共に、見事にトカゲは岩石に戻って砕け散った。


・・・・・ええぇ!? と、塔子さん!?


二匹目、三匹目が襲い掛かる。


彼女は慌てることなく体勢を即座に整え、次は左をお見舞いした。


強烈な拳がトカゲを粉砕する。


そして瞬く間も無く、今度は蹴りが・・・!


弾みをつけた、綺麗に安定した姿勢での回し蹴りが炸裂。


あえなくトカゲは砕かれ、ボロリと地に落ちた。


「ふしゅう~~・・・」


大きく頬を膨らませ、塔子さんは息を吐き出す。


拳を構えながらトカゲの群れを睨みつける、そのドスの効いた視線の鋭さときたら、もう・・・。


「・・・・・」

「彼女は奥方の遠縁なんだよ」


ポッカ~ンとしているあたしに門川君が説明してくれる。


それは、知ってる、けど。


「お、奥方って扇舞の一族じゃなかったっけ?」


「だから、『遠縁』なんだよ。彼女は扇舞一族じゃない。怒涛の一族だよ」


「はい? ど、怒涛・・・?」


「肉体戦闘のスペシャリストだ。直接攻撃力の高さにおいて、怒涛の一族の右に出るものは無い」