神様修行はじめます! 其の三

あの状態じゃ、とても太刀打ちできない。


早く助けないとブラザーズも刺客部隊も全員殺されてしまう!


焦るあたしの目に、この場に相応しくない物が見えた。


白い雪の中で目立つ鮮やかな色彩。


・・・ん? あれ、なんだろう?


重ね熨斗の縁起の良い長い袖が風に靡いている。


手の込んだ細工のかんざしがキラリと光った。


刺客部隊の中に混じって立つ、あれは・・・

あれは・・・・・!?


その人物を正確に認識して、あたしは心底驚いた。


あ、あそこにいるのって・・・・・


塔子さん―――っ!!?

門川乙女会代表の、塔子さん!!


あたしは両目も口もバッカリ大きく開いて叫んだ。


なに!? なんで!? どーゆー事情で!?

よりにもよってそんな危険地帯に・・・


「なんで塔子さんがいるの!?」

「・・・・・里緒!?」


あたしの叫び声に反応して塔子さんが頭上を見上げた。


「塔子さん、逃げ遅れたの!? 大丈夫!? 今すぐ助け・・・・・!」


あたしの叫び声はノドの奥に飲み込まれた。


先端のトカゲ兵隊が飛び掛るように塔子さんに向かって襲い掛かる!


ああ! 塔・・・・・!!


扇を持った塔子さんの目がギラッと鋭く光った。


紅く染まった唇の端がクィッと上がり、トカゲに向かい不敵に笑う。


・・・・・

・・・そうかっ!!


塔子さんは先代の奥方の遠縁!


奥方は扇舞の一族の優秀な舞闘者だった!


じゃあひょっとして塔子さんにも、扇舞の戦闘能力が・・・!?