神様修行はじめます! 其の三

阿・吽。ムク犬ブラザーズ。

そうか。ブラザーズを助けてもう一度結界を張ってもらうんだね?


そうすれば異形のモノは入り込めなくなる。


「そういう事じゃ」


「よし行こう! アレクサンドロヴィチ3世、カモメちゃん、阿・吽の所まで全速力でお願い!」


夫婦の亀の柔和な小さな目が、承知してくれたように見えた。


そして・・・・・


次の瞬間、ドッガーンといきなりトップスピードで加速し始めた。


うぎゃ―――――!?


勢い余って引っくり返り、しま子に支えてもらって助かった。


でなきゃ甲羅から吹っ飛ばされてたかも。


ひぃぃ~忘れてた。 伝書亀の本気スピードって常識はずれだったんだっけ。


凄まじい勢いで後ろに流れる景色を見ている余裕も無い。


顔面に激突する風を避けるように顔を背け、両手でガードする。


そうでもしないと呼吸するのも不可能だ。


冬の凍える風が全身を縛りつけ、痛めつける。


か、亀なのに新幹線並みの速さだよ。


てか、すでにリニアモーターカーの域に達してないか?

ここの亀って最先端。


凄い、速い、寒い、苦しい、怖い~!


ごめんカモメちゃん、全速力って言ったの撤回するから、3段階くらいスピード落としてー!


必死にゼエゼエ呼吸していると、あっという間に門川正門に到着した。


亀たちが夫婦揃ってゆっくりスピードを落とし下降していく。


ふぅ、良かった助かった。

あのスピードでいきなり急停止されたらどうなる事かと心配したよ。


見下ろす地上に、トカゲ兵隊の大群が見える。


お互いが積み重なるばかりの勢いで一点に向かって突進している。


兵隊たちにグルっと取り囲まれた中心には・・・


地面に倒れているムク犬ブラザーズ!


それを守るように7~8人の門川の刺客部隊が槍を手に身構えている。


白い衣装が血にまみれ、全員大きな負傷をしているのが明らかだった。