神様修行はじめます! 其の三

「門川君! 絹糸の足を生やしてくれてありがとう!」


「だから生えたわけでは・・・まあいい、絹糸どうだ?」


「ふむ。違和感は無いようじゃな」


「そうか。・・・凍雨君」


「は、はいっ」


「君のおかげだ。助かったよ。礼を言わせてくれ」


「永久様・・・」


「君がいてくれて良かった。本当に感謝する」


凍雨君の顔が歪んだ。

涙ぐんでグスッと啜り上げ、ふるふると首を振る。


「そんな、永久様、ぼくはそんな・・・」


それだけ言って感極まるように沈黙し、ただひたすら腕で目元を拭った。


凍雨君、良かったね。


門川君とふたりで戦えた事が、彼の胸の中のわだかまりを消し去ったんだ。


罪悪感とか、引け目とか負い目とか、肩身の狭さとか。


彼を縛り付けるそんな苦しい感情から救われたんだ。


『君がいてくれて良かった』


門川君からのその言葉はなによりの救いになったろう。


門川君はそのために彼と一緒に戦ったのかもしれない。


彼を苦しみから解放するために。


きっと凍雨君の目にも見えている事だろう。


門川君の氷の壁の奥で揺れている、優しい花が。


ねぇ凍雨君、見えてるよね?

とっても綺麗な花でしょう・・・?


「さて、それでは行くぞ」

絹糸が促した。


「行く? どこへ?」


あぁ、あのトカゲ兵隊を倒しに屋敷に戻るのか。


それにきっとこれから、他の異形のモノ達も大挙して押し寄せて来るだろうし。


迎え撃たなきゃならない。


「トカゲの兵隊もそうじゃが、まずは大元をなんとかせねばならぬ」

「大元?」

「阿・吽(あ・うん)じゃよ」