神様修行はじめます! 其の三

アレクサンドロヴィチ3世とカモメちゃんが、とっさに浮上する。


さすがに粘度の高い溶岩はここまで届かないけれど・・・


でも大量の土砂や岩石、炎の飛沫が怒涛の勢いでこっちへ飛んでくる。


危ない! あれに巻き込まれたら・・・!!


凍雨君がとっさに両腕で自分の頭を抱え込む。


しま子があたしを庇い、全身を包み込むように抱きしめた。


その腕の中であたしは必死に暴れる。


しま子放して! 門川君が! 門川君が――!!


「門川君―――!!」


カアァァッ!!っと純白の強烈な光が走った。

うわ! 眩しい・・・! 


しま子の腕の間から、落ち着き払った表情の門川君の姿が見える。


彼は片手を絹糸に向けて治癒し、もう片手をトカゲの方へ向けて・・・


『氷棺にて眠れ。身を震わし、心砕かん』


その言霊が紡がれた瞬間、ギィンッ! と耳の奥まで凍りつきそうな冷気が発生する。


強烈な冷気に内臓がギュウッと縮みあがり、全身が固まった。


大量の土砂、岩石、炎の飛沫。

その時、一瞬で全てが完璧に氷結した。


パーン!!


と破裂音が響き、土砂も岩石も、炎の飛沫までもが跡形も無く粉砕した。


炎は蒸気となり、岩石は粉塵となり、呆気なく霧散していく。


一瞬。


ほんとに、ほんの一瞬の間だった。


・・・・・・助かった。


あたしはしま子に抱かれながら、ホケッと体から力を抜いた。


はひぃ~っと細い息を吐く。


瞬きする間もないほどの一瞬で、簡単に、片がついてしまった。


しかも・・・片付けた当の本人は、まっったく平然としてるし。


淡々とした無表情のまま絹糸の治癒を続けている。


本当に、この人って、まぁ・・・。

もちろん感謝もしてるし、凄いと認めるし、尊敬もするけどさ。


ここまで簡単にスっゴイ事されちゃうと、人間、逆にムカついてくんのはなぜかしら?