神様修行はじめます! 其の三

だから『どの糸も、あえて持ち上げるな』と言っているんだ。


追って沙汰するって言葉は、きっとすごく都合の良い言葉なんだろう。


たぶん、いつまで『追って』も、なんの沙汰もないんだろう。


長老たちの糸に触れない代わりに、凍雨君の糸にも決して触れない。


そうする事で長老達を押さえて、凍雨君を彼等から守る。


許すも、許さないも、このまま何事も無かったように。


たぶん、そういう事なんだろう。


あたしの勝手な推測だけど、そんなに間違ってはいないと思う。

だって・・・


凍雨君、泣いてるから。


唇を強く結んで、肩を大きく上下させながら。


白い頬に幾つもの涙がホロホロと伝って落ちる。


門川君を見る潤んだ赤い両目は、深い深い謝罪と感謝が込められていた。


― ズウ・・・ン ―


突然振動が響いた。


ハッと振り返る。

トカゲが、ついに痺れを切らしたのか動き始めた。


こっちに向かって一直線に進んでくる。


アレクサンドロヴィチ3世とカモメちゃんが、素早く移動して距離をとってくれた。


トカゲは真っ直ぐわき目も振らずに追って来る。


トカゲの通り道の木々や、なぎ倒す木々がマグマの高熱のせいで次々と燃え上がっている。


だ、大丈夫かな? これって火災の前兆?


雪のお陰ですぐに燃え広がったりはしないだろうけど、このまま逃げ回ってたら被害が大きくなるばかりだ。


凍雨君が腕で涙をグイっと拭った。


そしてキリッ!と鋭い視線でトカゲを睨み据える。


「ぼくにまかせてください!」


両手で印を組み、目を閉じて、一気に精神集中。


シュウゥ・・・と骨に染みるような強い冷気が辺りに充満した。


満を持して気合一発、印を組んだ両手をトカゲに向かって突き出す。


― キイィィン! ―


トカゲの巨大な全身が、丸まんま透明な氷漬けになってしまった。


ビタリと歩みが止まって動かない。


うおお――! すごい凍雨君―――!