神様修行はじめます! 其の三

意識がハッキリしたせいで痛みを強烈に自覚してしまった。


ジタバタ夢中で柱から抜け出そうとしたけど、あまりの痛さに思わず体の動きが止まる。


痛っ! やっぱり、怪我・・・!


「うぐぅぅっ!」


歯をギュッと食いしばった。震えながら痛みに堪える。


早く・・・早く逃げなきゃ!

こんなとこでマゴマゴしてたら溶かされる!


気体になって骨すら残らない、そんな悲惨な最期はゴメンだわ!


でも痛みで体が動かないし、柱はガッチリあたしを挟み込んでいる。


えぇい! 放してよ! 柱に懐かれる覚えはない!


皮膚が焼けるような暑さのせいと、切羽詰った恐怖のせいで汗がドオッと噴き出した。


ドロリと舌から垂れたマグマが、細く細くゆっくりと下へ向かって伸びる。


柱の間から逃げ出せずに呻き続けている、あたしへ向かって。


暑さの汗よりも焦りと恐怖の汗が勝った。


垂れ落ちてくる燃え滾るマグマを見上げながら、頭の中はもう真っ白だ。


来る・・・・・・こっちに落ちてくる!

ああぁぁぁ――――!!


― キィン・・・! ―


あたしの横を鋭い冷気の風がすり抜け、全身の汗を冷やした。


細いマグマの筋が、みるみる透明な分厚い氷に包まれる。


ジュワッと白い湯気が上がり、薄黄色に光り輝くマグマが黒々と変色して固まった。


爬虫類特有の無表情な両目の下目蓋が、まばたきをした。


そしてあたしからゆっくり視線を動かしていく。


動いた視線の、その先には・・・・・


爬虫類も泣いて謝りそうなほどに、完璧な無表情を誇る門川君が佇んでいた。