神様修行はじめます! 其の三

報告を聞いた門川君が最前列に座っている相手に質問する。


「それぞれの一族への派遣はどうなっている?」


「すでに第一陣を派遣済みです。ただ遠方の一族に到着するには時間が・・・」


「転移の宝珠を使え」


「え!? あ、いやしかし・・・」


「使い切ろうが構わない。出し惜しみをしている状況ではない」


うろたえる相手に門川君はキッパリ言い切った。


「宝珠だろうが家宝だろうが、役に立つなら何でも使え。蔵を守って大事な命を失うような真似はするな」


一同はシンとして門川君に注目した。


門川君は背筋をスッと伸ばし、冷静な切れ長の目で皆を見渡す。


良く通る落ち着いた声で力強く言い放つ。


「各地からの要請があればできる限り叶えろ。皆を守れるなら宝物全て消費する事を僕が許可する」


「・・・・・」


「多数の優秀な人材、豊富な物資。烏合の衆の敵に比べ、こちらには勝利への条件が揃っている」


全員が門川君を食い入るように見つめている。


美貌の、まだ歳若い、でも数々の修羅場を潜り抜けてきた英雄を。


「門川に永久あり」とうたわれた、類まれな能力の持ち主である自分達の当主を。


「勝てる。勝つのだ。僕が必ずや勝利に導く。だから・・・」


門川君の全身に冷気が満ちる。


引き締まった、澄みわたる清涼な冬の早朝のような冷気。


穢れの無い透明な意志の力が、全員の心の奥底に染み渡っていく。


「共に乗り越えるぞ。僕を、自分自身を、そして門川の未来を・・・信じて皆、ついて来い!」


「はは――っ!!」


一同は平伏した。

自分達の当主へ向かって。


門川の頂点に君臨する者に、自分の身を預けると決意した証として。