「当主様! 当主様はいずこにおられますか!?」
その時、ドタバタと乱れた足音と大声が慌ただしく響いた。
「いた! ここにおられるぞ!」
「おおぉ! こちらでございましたか!!」
まだ若い、薄い灰色の袴姿の術師達が複数、血相変えてこっちに走ってくるのが見える。
「当主様! 今までどちらに!?」
「このような非常時に突然姿を消されて、皆は大変心配いたしました!」
「方々を探し回りました! なにか不測の事態でも起こりましたか!?」
術師たちが滑り込むように廊下に揃って平伏する。
そして次々と今までどこに!? なにがあった!?をしつこく追求し始めた。
それに対して門川君は「どこでもないし、何もない」と、強引に話を終わらせる。
そしてすまし顔でスタスタ廊下を進んで行く。
あたしと絹糸も黙ったまま後に続く。
術師達は、軽く腰を屈めながらワタワタと後を追ってきた。
「いや、しかし当主様!」
「何もないと申されましても、さすがにそれは!」
「いったい何事がございましたか!?」
「だから、何もないと僕は言っている」
何があったと問い詰められるたびに、あたしは身の縮む思いだった。
彼が「何もない」と嘘をつくたび、申し訳なさで胃がキリキリする。
そうだよね。緊急事態の真っ最中に当主が姿消したら、そりゃみんな慌てるよね。
大騒ぎになったろう。
ヘタすりゃ自分だけ逃亡したと疑われたかもしれない。
彼はみんなにどうやって弁明するつもりだろうか。
門川君は当主として、ものすごいタブーを冒してしまったんだ。
一族からの信用を失うかもしれない大きな危険を冒した。
・・・あたしが、それをさせてしまったんだ。
つくづく自分の失態と愚かさ加減を思い知り、情けなかった。
守らなければならないのに・・・あたしは、いつも彼に守られてばかりだ。
その時、ドタバタと乱れた足音と大声が慌ただしく響いた。
「いた! ここにおられるぞ!」
「おおぉ! こちらでございましたか!!」
まだ若い、薄い灰色の袴姿の術師達が複数、血相変えてこっちに走ってくるのが見える。
「当主様! 今までどちらに!?」
「このような非常時に突然姿を消されて、皆は大変心配いたしました!」
「方々を探し回りました! なにか不測の事態でも起こりましたか!?」
術師たちが滑り込むように廊下に揃って平伏する。
そして次々と今までどこに!? なにがあった!?をしつこく追求し始めた。
それに対して門川君は「どこでもないし、何もない」と、強引に話を終わらせる。
そしてすまし顔でスタスタ廊下を進んで行く。
あたしと絹糸も黙ったまま後に続く。
術師達は、軽く腰を屈めながらワタワタと後を追ってきた。
「いや、しかし当主様!」
「何もないと申されましても、さすがにそれは!」
「いったい何事がございましたか!?」
「だから、何もないと僕は言っている」
何があったと問い詰められるたびに、あたしは身の縮む思いだった。
彼が「何もない」と嘘をつくたび、申し訳なさで胃がキリキリする。
そうだよね。緊急事態の真っ最中に当主が姿消したら、そりゃみんな慌てるよね。
大騒ぎになったろう。
ヘタすりゃ自分だけ逃亡したと疑われたかもしれない。
彼はみんなにどうやって弁明するつもりだろうか。
門川君は当主として、ものすごいタブーを冒してしまったんだ。
一族からの信用を失うかもしれない大きな危険を冒した。
・・・あたしが、それをさせてしまったんだ。
つくづく自分の失態と愚かさ加減を思い知り、情けなかった。
守らなければならないのに・・・あたしは、いつも彼に守られてばかりだ。


