自分自身と、未来を信じろ。

それはあの別れ際に彼に言われた言葉だ。


ちゃんと聞いていたつもりだったけれど、あたしは聞いていなかった。


再び心に刻み込まなければならない。今、ここで。


「門川君・・・」

あたしは手を差し伸べた。


彼の冷たい大きな手が包み込んでくれる。応えてくれる。


信じる。信じるよ門川君・・・。


「こりゃお前ら、はようせい。皆が探しておるぞ」


「あぁ、分かっている。いこう」


「小娘、お前も余計な事は一切口にするでないぞ」


「う、うん」


さっきの一件が表沙汰になったら、また面倒なことになりそうだ。


黙っているのが賢明だろう。


ヘタすりゃ凍雨君や氷血の一族まで巻き込みかねな・・・

あ!


「そ、そうだ! 凍雨君としま子が!」


「どうかしたのか?」


「権田原の里で、気味の悪い異形のモノ達に襲われたの!」


大丈夫かな! ふたりとも無事でいるだろうか!

あの後どうなったんだろう!


「とにかく相手はものすごい数だったの!」


「里の中の動向なら、あの一族は全て把握している」


「鳥の巣穴の引越しまで、手に取るように感知する連中じゃからのぉ」


「だからすぐに救助に向かったはずだ。心配は無いよ」


そ・・・そうかな。そうだといいけど。


里も無事なんだろうか。


あ! ふたりが救助されたならされたで・・・

それじゃ凍雨君の一件が皆にバレちゃうって事じゃん!?


だ、大丈夫かな凍雨君・・・。