覚悟。
様々な形での痛みと苦しみを受け止める覚悟。
そして、彼が信じる未来。
そうだ。あたしも信じた。
茨の道の向こうの未来で、あたしの隣には門川君がいる事を。
ただ夢みて望むだけでは叶えられない未来。
進み歩き続ける足から血を流して実現する未来。
それをあたしは、歩き始めた途端に痛みに悲鳴を上げて放棄するところだった。
『彼のために』という美辞麗句を言い訳にして。
あたしは唇を強く噛み締める。
本当だ。確かに塔子さんや御簾向こうの女性の言う通りだ。
あたしは、都合の良い言い訳を隠れ蓑にした卑怯者だったんだ。
「ふん。口だけは達者になりおったのぉ」
「絹糸、僕は・・・」
「あぁ、よいわよいわ。口から血を垂らしながら熱弁されても不気味で仕方ないわい」
絹糸はシッポを揺らし、くるりと向き直る。
「それよりもこちらを片付るがよい」
そう言った絹糸の黄金の視線の先には・・・
壁一面に垂れ下がる御簾。
竹で編まれた、細かい目の隙間向こう。
よく見通せない視界の向こうで、みっつの影が門川君に向かって平伏していた。
門川君の視線も御簾の向こうに向けられる。
途端に彼の全身に纏う気配がキンと張り詰めた。
静かで落ち着いた、門川当主の声が影に向かって話しかけた。
「長老方よ」
「・・・はい。当主様」
軽い空咳と共に、真ん中の小柄な影がしゃがれた声を出す。
老齢の男性の声だ。間違いない。
「御出ましになられるとは、思いもよりませずにご無礼を致しました」
隣で平伏している、あたしと話していた女性の声も聞こえる。
「高座よりのご挨拶とご無礼、なにとぞご容赦下さいませ」
「それは別段、僕は気にしない。ただ、容赦というなら・・・」
様々な形での痛みと苦しみを受け止める覚悟。
そして、彼が信じる未来。
そうだ。あたしも信じた。
茨の道の向こうの未来で、あたしの隣には門川君がいる事を。
ただ夢みて望むだけでは叶えられない未来。
進み歩き続ける足から血を流して実現する未来。
それをあたしは、歩き始めた途端に痛みに悲鳴を上げて放棄するところだった。
『彼のために』という美辞麗句を言い訳にして。
あたしは唇を強く噛み締める。
本当だ。確かに塔子さんや御簾向こうの女性の言う通りだ。
あたしは、都合の良い言い訳を隠れ蓑にした卑怯者だったんだ。
「ふん。口だけは達者になりおったのぉ」
「絹糸、僕は・・・」
「あぁ、よいわよいわ。口から血を垂らしながら熱弁されても不気味で仕方ないわい」
絹糸はシッポを揺らし、くるりと向き直る。
「それよりもこちらを片付るがよい」
そう言った絹糸の黄金の視線の先には・・・
壁一面に垂れ下がる御簾。
竹で編まれた、細かい目の隙間向こう。
よく見通せない視界の向こうで、みっつの影が門川君に向かって平伏していた。
門川君の視線も御簾の向こうに向けられる。
途端に彼の全身に纏う気配がキンと張り詰めた。
静かで落ち着いた、門川当主の声が影に向かって話しかけた。
「長老方よ」
「・・・はい。当主様」
軽い空咳と共に、真ん中の小柄な影がしゃがれた声を出す。
老齢の男性の声だ。間違いない。
「御出ましになられるとは、思いもよりませずにご無礼を致しました」
隣で平伏している、あたしと話していた女性の声も聞こえる。
「高座よりのご挨拶とご無礼、なにとぞご容赦下さいませ」
「それは別段、僕は気にしない。ただ、容赦というなら・・・」


