神様修行はじめます！ 其の三

「お前は本当に永久を守る気があるのか？」


ぎゅうぅ！っと全身が締め付けられるように痛んだ。


黄金に輝くふたつの目が、あたしを貫くように見つめている。


視線を逸らしたかったけど・・・しなかった。


逸らすべきでは無かったし、逸らせる筋合いでも無い。


あたしは目を逸らさずに聞かなければならないから。


「絹糸、天内君はこちらの世界に来てから日が浅いんだ」


門川君がハンカチにペッと血を吐きだした。


吸いきれない血液がハンカチの上で赤い血溜まりになる。


「元々こちらの世界の住人である僕達とは、どうしても差異がある」


「その事情はもはや考慮されぬ」


「馴染むまで時間がかかるのは仕方がないだろう」


「待ってはおれぬ。待つ間に・・・お前が死ぬ」


ズキン！と、強烈な痛みが胸を刺した。


門川君が、死ぬ。

それは最もあってはならない事。


「永久の命は、全てのどんな事情よりも優先されるものじゃ」


「絹糸」


「当然、小娘の事情などよりものぉ」


・・・・・。


あたしは、現世で生まれ育った。


こちらの世界の事を何ひとつ知らなかったし、この非情な世界にどうしても馴染み切れない部分がある。


それがあたしの弱みであり、結果、門川君の弱みになってしまう。


「小娘よ、このような事態にならぬよう我は幾度もお前を諭したはずじゃぞ」


「・・・・・」


「お前が自分で決意し、覚悟を決めたあの時の時点から、事情などは考慮されぬのじゃ」


門川君を守ると覚悟を決めた時点で。


あたしの生まれがどうとか、じー様がどうとか、慣れないとか馴染みが薄いとか。


そんなのはハッキリいって一切関係ない。


重要なのは、あたしが彼を本当に守りきれるかきれないか。


その一点にしか、意味など存在しない。