長いシッポをユラユラさせて絹糸がこちらを見上げている。
「これほどの大掛かりな術式の、しかも完成形の中に飛び込むなどと。死ぬ気か? 永久よ」
「残念ながら死ぬ気はない」
「とてもそうは思えぬわ。こんな無茶な真似をされてはのぉ」
術式の中に飛び込んだ? それって、あたしにかけられていた術式よね?
無茶な真似って・・・。
あたしはもう一度彼の姿をよく見た。
白いハンカチが血を吸い取って、かなり赤く染まってしまっている。
薄墨色の着物の胸元が血に染まって広範囲で変色していた。
さすがに鼻血程度じゃこうまでならない。たぶん吐血したんだ。
鼻や口からだけじゃない。爪の間からまでタラタラと出血し、止まる様子が無い。
これ、術式の中に飛び込んだ・・・から?
あたしを救い出すために?
そのせいで彼が全身血だらけに・・・。
「強大な力場を強引に乱した結果じゃ。本来なら建物が破壊され、死人が出てもおかしくは無い」
「・・・・・」
「それを永久が引っ被ったんじゃよ。被害を最小限に抑えるために」
門川君。あたしを助けるために・・・。
こんな目に遭ってしまった。
いいえ、遭わせてしまった。あたしが。
嬉しい気持ちより何より、申し訳なくて泣きそうになる。
「小娘よ」
静かな絹糸の呼びかけに、あたしの胸はギクンと震える。
「お前はもう一人前の神の末裔。我はそう言った」
「・・・・・」
「そう信じておったからじゃ。だがその認識を改めねばならぬか?」
「・・・・・」
「お前、自分がした事を正しく理解しておるか?」
絹糸の声は、あくまでも静かで穏やかだった。
ほんの少しも怒ってるとか、荒々しいとか、そんな気配は無かった。
だからこそ・・・
余計に、次に来るだろう言葉があたしには怖かった。
「これほどの大掛かりな術式の、しかも完成形の中に飛び込むなどと。死ぬ気か? 永久よ」
「残念ながら死ぬ気はない」
「とてもそうは思えぬわ。こんな無茶な真似をされてはのぉ」
術式の中に飛び込んだ? それって、あたしにかけられていた術式よね?
無茶な真似って・・・。
あたしはもう一度彼の姿をよく見た。
白いハンカチが血を吸い取って、かなり赤く染まってしまっている。
薄墨色の着物の胸元が血に染まって広範囲で変色していた。
さすがに鼻血程度じゃこうまでならない。たぶん吐血したんだ。
鼻や口からだけじゃない。爪の間からまでタラタラと出血し、止まる様子が無い。
これ、術式の中に飛び込んだ・・・から?
あたしを救い出すために?
そのせいで彼が全身血だらけに・・・。
「強大な力場を強引に乱した結果じゃ。本来なら建物が破壊され、死人が出てもおかしくは無い」
「・・・・・」
「それを永久が引っ被ったんじゃよ。被害を最小限に抑えるために」
門川君。あたしを助けるために・・・。
こんな目に遭ってしまった。
いいえ、遭わせてしまった。あたしが。
嬉しい気持ちより何より、申し訳なくて泣きそうになる。
「小娘よ」
静かな絹糸の呼びかけに、あたしの胸はギクンと震える。
「お前はもう一人前の神の末裔。我はそう言った」
「・・・・・」
「そう信じておったからじゃ。だがその認識を改めねばならぬか?」
「・・・・・」
「お前、自分がした事を正しく理解しておるか?」
絹糸の声は、あくまでも静かで穏やかだった。
ほんの少しも怒ってるとか、荒々しいとか、そんな気配は無かった。
だからこそ・・・
余計に、次に来るだろう言葉があたしには怖かった。


