神様修行はじめます! 其の三

決然とした声。

迷いもなにも無い声が、有無を言わさず言い切る。


『苦しかろうが、悲しかろうが、辛かろうが逃げたかろうが、それでも耐えてもらう。そして守ると誓った以上は守ってもらおう』


異形のモノ達から。


僕を潰そうと裏で画策する実力者達から。


連綿と続く門川の、呪いにも似た歴史の歪みから。


そして・・・


『そして君を僕から引き離そうとする企みからも、守ってもらう』


「・・・・・」


『君は誓った。僕を苦しめる全てのものから僕を守ってみせると』


ならば守れ。

僕を最も苦しめるものから僕を守るんだ。


「最も・・・苦しめる、もの?」


『そうだ。君を失うという最も耐え難い悲劇から、僕を守ってくれ』


「・・・・・」


・・・あたしを失う事こそが・・・


なによりの悲劇だと?

だからあたしに耐えろと言うの?


あなたのそばから離れさえすれば、あなたを守れる事を百も承知のうえで。


日々、足枷になり彼を苦しめる自分の存在に、耐え続けてみせろと?


「自分のせいで門川君が責められる姿を、見続けなければならないなんて・・・」


『耐えられないか? 辛いか? 苦しいか?』


だがそれは。


確かに君自身が選んだ道のはずだ。


どれほど辛い道であろうとも共に歩いていくと。


『以前、僕は言ったはずだ。僕は君を失っては、生きてはいけない』


「・・・・・」


『それを知りつつ、君は行くのか? 僕は君が離れていくのを断じて望みはしないんだ』


涙が・・・


涙が・・・溢れて・・・


両目が燃えるように熱く痛む。


ひぃひぃと悲鳴のような細い泣き声が止まらない。