神様修行はじめます! 其の三

この声は・・・

この、素っ気無いほど冷静な、感情のこもらない声は・・・


『どこへ行くつもりだと聞いている』


間違えようも無い。間違えるはずも無い。


この、愛しい声は・・・


『答えてもらおう。君はどこへ行く?』


背中で声を受け止めながら、あたしの唇はフルフルと震え頬が歪む。


泣き声を出さないよう、必死に口をへの字に結んで・・・耐えた。


『どこへ行くというんだ。一人で』


ぽたぽたと涙が歪んだ頬を伝い、顎から落ちていく。


俯き、鼻を啜って、肩に力を込めて、精一杯あたしは答えた。


「千年の・・・檻へ・・・」


声は掠れた。

自分でも情けないくらい、見事なほどに泣き声だった。


『僕を置いてか?』


心臓がズクンと疼いた。


ウッと息が詰まって、あたしは再び口をへの字に結ぶ。


『誓いを破り、僕を置いて行くというのか?』

「門川君・・・」


彼の名を呼ぶ声は、やっぱりヒドイ泣き声で。


震えるあまり、まともに発音できなかった。


そして振り返る事も出来ず、あたしは彼の声に背を向けたまま首を横に振る。


「違う。違うよ。誓いを破るんじゃなくて・・・」


首を横に振るたび、熱い涙の筋が乱れて首筋を伝う。


誓いは破らない。そうじゃない。


・・・果たすんだよ。今ここで。


あなたと交わした・・・あなたを守ると断言した誓いを。


『一生そばに居ると誓った言葉は、嘘か?』


あたしの胸は激しく痛み・・・その痛みを誤魔化すように、懸命に首を横に振る。