神様修行はじめます! 其の三

あたしの頬に涙が流れ落ちていく。


雛型と同じに、次から次へと伝い落ちていく。


そう。雛型、同じなんだよ。


あたしもあなたも、誰しも、同じなんだよ。

だから・・・ね・・・


雛型が、ぴくんと動いた。


凍った涙で覆われた顔がこちらを振り向く。


だから・・・


だから、次はあたしの番だから。

あたしが受け取る。


そしてここで償い続けていく番なんだよ。


あたしも罪人だ。


永遠に許される事の無い罪人なんだ。


だから償わなければならない。ここで。


純白以外の何も存在する事の無い、あなたが千年苦しみ続けたこの場所で。


愛する者のために犯した罪を・・・・・。


風雪にまみれて乱れる黒髪が、雛型の涙に濡れた顔を隠す。


乱れ髪の合い間から、寒さに凍り付く頬に新たに流れる涙の雫が見えた。


すでに凍った頬の上に、さらに凍り付く苦悩の雫。


雛型の朱色の着物の袖が動く。


ゆっくり、その指先があたしに向かって伸びる。


救いを・・・縋り付くものを求めるかのように。


お互いの頬を流れる涙。


あたしの手も、雛型に向かって伸びていく。


受け止めるために。

継ぐために。


指先と指先が求め合う。距離がどんどん近づく。


何ひとつ言葉を交わさずとも、あたし達の心はひとつだった。


雛型・・・あたし・・・


さあ・・・・・

さあ、受け取るから。受け継ぐから。


今ここから、あたしが新たな雛型となるから・・・




『どこへ行くつもりだ? 天内君』


手を重ね合わせる寸前・・・


突然聞こえた声に、あたしは全身の血が一気に目覚めるような衝撃を受けた。