神様修行はじめます! 其の三

あ・・・・・

あたしの口が、パカリと開いた。


予測不能の話の内容に、思考回路が一瞬パニックを起こす。


そんなこっちの茫然自失な状況にはおかまいなしに、周囲がおもむろに動き始める。


あたしの足元で平伏していた刺客達がササッと移動する。


代わりに、御簾の前に控えていた数人の侍女たちが、あたしを取り囲むように円陣を組んで床に膝を折った。


そして各々が両手で印を組み始める。


侍女達の間を繋ぐように、気の力が充満していくのが感じられた。


ちょ・・・ちょ・・・


「ちょっと待ったああ――!!」


あたしはとっさに大声を張り上げた。


「待ってよちょっと! 意味分かんないよそれ!」


あたしをグルッと取り囲む侍女達と、御簾の向こうへ向かって叫ぶ。


「あたしが雛型って、どういう事なの!? なんであたしが雛型になるのよ!?」


意味不明すぎるでしょ!?


勝手に問答無用で、術式発動しようとしてんじゃないわよ!


・・・って、だから! あんたもさっきから御簾越しにふんふん頷いてるんじゃないっての!


「直接話せっつってんのよ! 伝言ゲームじゃあるまいし!」


サシで話そうじゃないのよ! 一対一で!


御簾を睨みつけていると、侍女がしずしずとその場から遠ざかっていった。


御簾の奥から、静かな女性の声が聞こえてくる。


中年? の、やっぱり女性の声だ。


「事情を知るならば、理由も知れよう。座り女の機能不全がこの非常事態の元凶である」


落ち着いた穏やかな声。


こっちの動揺とは正反対に、憎たらしいぐらいに冷静な声だ。


「あのねぇ! 座り女が元凶って言うよりも、門川の腐れ根性が元凶なんじゃないの!」


あたしは大声でハッキリ主張してやった。


どこまでも厚ぼったい、そのツラの皮に心底ムカつく!