神様修行はじめます! 其の三

とんっ。

軽い音が響いた。


たぶん御簾越しの女の人が、手に持った扇で床を叩いたんだと思う。


それを合図のように、一段低い場所に頭を下げて控えていた侍女風の衣装の女性がにじり寄る。


「・・・・・」


御簾越しに女性が、侍女に向かって何かを囁いているのが聞こえる。


侍女はふんふん頷き、そして御簾に向かって深く頭を下げた後、こちらに向き直って背筋を伸ばした。


滔々と話し出す。


「我が主様のお言葉でございます。心して聞かれますように」


・・・・・はい? お言葉?


「天内の娘よ、呼んだ理由は他でもない、現在の非常事態についてである」


侍女は表情を変えず、あたしを真っ直ぐ見ながら機械の様にしゃべり続けた。


「お前はこの事態の詳細を知っておるのか?」


「・・・へ?」


「知っておるのか?」


侍女と御簾の奥を交互に見比べた。


どっちに答えりゃいいのよ、この場合。


しゃべってるのはこの侍女さんだけど、質問してるのは御簾の奥の女性よね?


とりあえず御簾を見ながらあたしは答える。


「知って・・・ますけど?」


一応、敬語で話した。


人に脅しをかけるような無礼千万な連中だけど、この人達はかなり身分の高い人物だと思う。


門川上層部・・・へたしたら、長老会のレベルまでいっちゃうかもしれない。


うかつに失礼な態度をとって門川君の不利になるとマズイ。


ここはひとまず下手に出て、様子を探ろう。


「・・・・・」


また御簾越しに女性が、侍女に向かって何かを囁く。


さっきと同じように侍女は深く頭を下げ、背筋を伸ばして話し出す。


「我が主様のお言葉でございます。心して聞かれますように」


だから、それはもういいから。


分かったから早く言ってよ。なんなのよ用件は?