神様修行はじめます！ 其の三

誰？　この連中。


あたしは眉間にシワを寄せ、目を細めて伺い見た。


・・・やっぱり良く見えない。でもボンヤリと形だけは、なんとか・・・。


真ん中の影は、どちらかというと小柄で背中が丸まってるような。


小太りなのかな？　なんだかさっきから「ゴホゴホ」と空咳を連発してる。


その声から想像するとたぶん年取ったおじいちゃんだ。


右端の影は細い影だった。


ほんの少しだけ透けて見える背格好と、髪型、着物の柄からして・・・


女性？　女の人だ。　歳まではさすがに分かんないけど。


左端は・・・

良く分からない。


髪は長いみたいだけどたぶん体格からして女性じゃない。


男の人だと思う。それ以外はまるで判断がつかない。


こいつらがあたしを連れてくるように命令した張本人なの？


「御報告申し上げます。ご命令どおり天内の娘を連れてまいりました」


ザザッ！と刺客達が一斉に影に向かって腰を下ろし、頭を下げて平伏した。


わ、な、なによ？

そんな揃って平伏されたら、立ってるあたしの気がとがめるじゃないの！


「さあご挨拶を申し上げろ」


刺客が平伏したままであたしに小声で話しかける。


挨拶って・・・・・。


あたしは非合法に、不当な扱いで、脅されて無理矢理連れてこられたんですけど？


なのに

『どーもこんにちはー。天内　里緒でーす』


・・・・・できるかそんなん！　挨拶なんて！


だいたいねぇ。


「あたしが天内　里緒だって事実は、あんた達が一番良く知ってるんじゃないの？」

「・・・おい！」


人影に対するあたしの挑発的な言動に、刺客が下から睨み上げる。


ふいっと横を向いて無視してやった。


実際は、あたしの心臓は不安に音をたててるし全身も緊張してる。


でもそれを悟られちゃいけないんだ。


弱みを見せたらどんどんつけ込まれる。


嘘でもまるで動じていない風を装わなくちゃ。