「どちらでもお前の好きに選べ」
好きになんて選べないじゃないよそれじゃ全然!
氷血の一族は、生きていくのもやっとな地域から戻って来たばかりなんだよ!?
泣いて大喜びしているところに「今すぐ元の場所に帰れ」なんて!
鬼!? 悪魔!? 人でなし!?
そんなのできるわけないじゃないの!
唇を噛み締め俯き続ける凍雨君。
そうか、凍雨君は人質をとられて脅されていたんだ。
氷血の民を守らなければならない、当主としての立場を逆手にとられて。
今思えば、確かに様子が変だった。
端境の屋敷に現れてからずっと妙なくらい明るかったし。
権田原に同行させてくれって懸命に頼み込んでたし。
かと思えば、権田原に着いた途端に無口になってしまった。
あたし達に秘密を抱えている事実から、必死に目を逸らしていたんだろう。
でもいよいよその時が近づいて、重苦しい心と葛藤していたんだ。
彼は自分の一族を裏切れない。
当主になったばかりの彼には、頼れる仲間は誰も居ないし。
いいなりになるしかなかったんだ。
・・・なんて卑怯なことするのよ!
絹糸の時も、お岩さんの時も、人質とって脅しをかけて!
本当にやってる事が千年前から全然変わらないのね! 伝統行事か!
辞書引いたら『門川』の欄に『脅すこと』って明記されてんじゃないの!?
「さあどうする? 来るのか来ないのか?」
「・・・行くわよ!!」
ヤケクソで叫んだ。
凍雨君が、すがり付く様な悲しい目であたしを見た。
権田原以外では門川君にとって唯一、本当に味方になってくれそうな一族なんだもの。
それをみすみす遠方に追いやるわけにいかない。
それよりなにより・・・
氷血一族の民を、これ以上不条理に苦しめるわけにはいかない。
「行きゃいいんでしょ行きゃ!」
行ってやるわよ! さっさと案内しなさい!
好きになんて選べないじゃないよそれじゃ全然!
氷血の一族は、生きていくのもやっとな地域から戻って来たばかりなんだよ!?
泣いて大喜びしているところに「今すぐ元の場所に帰れ」なんて!
鬼!? 悪魔!? 人でなし!?
そんなのできるわけないじゃないの!
唇を噛み締め俯き続ける凍雨君。
そうか、凍雨君は人質をとられて脅されていたんだ。
氷血の民を守らなければならない、当主としての立場を逆手にとられて。
今思えば、確かに様子が変だった。
端境の屋敷に現れてからずっと妙なくらい明るかったし。
権田原に同行させてくれって懸命に頼み込んでたし。
かと思えば、権田原に着いた途端に無口になってしまった。
あたし達に秘密を抱えている事実から、必死に目を逸らしていたんだろう。
でもいよいよその時が近づいて、重苦しい心と葛藤していたんだ。
彼は自分の一族を裏切れない。
当主になったばかりの彼には、頼れる仲間は誰も居ないし。
いいなりになるしかなかったんだ。
・・・なんて卑怯なことするのよ!
絹糸の時も、お岩さんの時も、人質とって脅しをかけて!
本当にやってる事が千年前から全然変わらないのね! 伝統行事か!
辞書引いたら『門川』の欄に『脅すこと』って明記されてんじゃないの!?
「さあどうする? 来るのか来ないのか?」
「・・・行くわよ!!」
ヤケクソで叫んだ。
凍雨君が、すがり付く様な悲しい目であたしを見た。
権田原以外では門川君にとって唯一、本当に味方になってくれそうな一族なんだもの。
それをみすみす遠方に追いやるわけにいかない。
それよりなにより・・・
氷血一族の民を、これ以上不条理に苦しめるわけにはいかない。
「行きゃいいんでしょ行きゃ!」
行ってやるわよ! さっさと案内しなさい!


