神様修行はじめます! 其の三

凍雨君の、とても苦しそうな表情。


俯き、視線を逸らし、怯えたように小刻みに息をしている。


「ごめんなさい天内さん。ごめんなさい・・・」


その口からは謝罪の言葉が繰り返されるばかり。


刺客達が凍雨君に代わって静かに話しはじめた。


「誰にも気付かれぬよう天内の娘を連れ出し、我等の手に渡すようにとのご命令が、氷血当主に下されたのだ」


・・・・・!!


あたしの胸に衝撃が走った。


なによそれ! どういうことよ!?


だ、誰にも気付かれないように門川の刺客部隊に引き渡せって・・・


思いっきり怪しい臭いがプンプン漂う話じゃないの!? それ!?


「いったいあたしに何の用があるっていうの!?」


「我等の役目はお前を連れて行く事。それ以外は何も知らぬ」


刺客達は淡々とそんな事を言う。


し・・・知らないって・・・そんなあんた!


偉そうに言わないでよ! 役に立たない男達ねっ!


「では行くぞ。天内の娘よ」

「誰が行くかっつーの!」


こちらに手を伸ばす相手に向かい、あたしは吐き捨てた。


やなこった。そんな訳の分からない話に誰が乗るか。


ただでさえあたしは上層部から目を付けられてるってのに。


この状況で「えぇ、共に行きましょう!」ってニコヤカに言ってもらえるとでも思ってたの!?


役に立たないうえに、バカかあんたらは!


「来る来ないの選択は自由。ただし、お前が断れば氷血一族は再び極寒の地に戻される」


「な・・・!?」


「すぐにでも長老会で決議されよう。やるとなったらどんな手段を用いてでも必ずやるぞ。あのお方らは」


あたしは口をパクパクさせて絶句した。


氷血の一族が・・・!?