神様修行はじめます! 其の三

図形の上に音も無く複数の人間が現れた。


手に槍を持ち、白い袴姿の屈強な戦士たち。


門川の刺客部隊だ! やった! 応援にきてくれたー!!


「待ってたよ! こっちこっち!」


そばに駆け寄ろうとしたあたしの前に、突然凍雨君が背中を向けてスッと立ちはだかる。


・・・え?


薄茶色の髪と紺色の着物に包まれた肩。まるで通せんぼするみたい。


あたしは目をパチパチさせた。


「約束は守ってもらえるんだろうな?」


凍雨君の静かな声。とても硬い・・・緊張感を含んだ声。


約束?


「それはあずかり知らぬ。我等は命じられた役目を果たすのみ」


「言う通りにすれば、氷血一族にはもう二度と関与しない約束だぞ!」


「だから、そんな約束は我等は知らぬ」


 ? ? ? 何の話?


凍雨君と刺客部隊の面々を交互に見比べ、あたしはキョトンとするばかり。


命じられた役目って、権田原を守ることでしょ?


それが氷血の一族となにか関係があるの?


「そんな曖昧な答えで、天内さんを渡せるもんか!」


厳しい口調で放たれたその言葉にびっくりした。


へ? あたしを渡す? 渡すってなに?


「何度も同じ事を言わせるな。時間が惜しい」


「天内さんには一切ヒドイ事はしないって約束だろう!?」


あたしは再び皆の顔を交互に見比べる。


きつい表情で睨みつける凍雨君。


淡々と無表情な刺客部隊たち。


あたしを・・・渡す? ヒドイ事はしない約束って・・・。


ヒタヒタと忍び寄る足音のように、嫌な予感が忍び寄る。


あたしは思わず一歩下がった。


「凍雨君・・・」

「・・・・・」


凍雨君の肩がピクンと動いた。そして沈黙する。


口の中が渇いて、うまく舌が回らない。


「どうゆう、こと?」