神様修行はじめます! 其の三

姿かたちは、人間の赤ん坊に酷似していた。


大きな頭に、細く華奢な手足、そして小さい胴体。


でも違う。


こいつら、明らかに人間じゃない。


皮膚が、樹皮だった。


冬の木の肌のような、パリパリに乾いて硬くなった皮。


手の指は、魔女の指のように長くゴツゴツと曲がった鋭い枯れ枝だ。


枝の指でウロの縁を握り、ウロの中からズルズル這いずり出てくる。


皮膚は完全に乾燥しきった樹皮なのに、体全体はジットリと濡れている。


まるで何かの体液に包まれているような・・・


それはまさに、不気味な化け物の出産シーンを見ているようで・・・


気持ち、悪い。


あたしは吐き気を覚え、口に手を当てた。


― ドサリ! ―


木の赤ん坊が雪の上に落ちた。


足はは太く長い、まるで根っこのようだ。


うねうねとヘビのように蠢いている。


化け物が身を起こし、ゆっくりと顔を上げた。


その顔は、まるで胎児のようで・・・


あたしはヒッと声を漏らして後ずさる。気味悪い。気味悪い!


木の赤ん坊の化け物が、今までの緩慢な動作からは考えられないスピードで腕を振り上げた。


――ビャッ!


空を切る音。枯れ枝が一本こちらに向かって一直線に飛んでくる。

さっきの枯れ枝だ!


あまりの速さに、印を組む時間も気を集中するヒマも無い。


しま子があたしの前に素早く立ちはだかり、難なく片手で枝を払いのける。


そ、そうだよ。 掴んじゃダメなら払えばいいんだ!


どっかにテニスラケット落ちてないかな!?


あたしこの前のテニスの授業で、先生が打ってくる球ひとつ残らずぜーんぶ場外ホームランにしたのよ!


おかげで実技の点数は散々だったけど!


この枝、片っ端から打ち返してやる! あたしの腕力で!