神様修行はじめます! 其の三

― パシッ! ―

あたしの目に突き刺さる寸前、しま子の手が枯れ枝を咄嗟に掴んだ。


ぎ・・・ぎりぎりセーフ・・・。先端が睫毛に当たってる。


危うく失明するところだった。


し、しま子、ありがとう! 凄い動体視力!


― ズバッ! ―

・・・・・!?


あたしの目の前で赤い液体が飛んだ。


枝を掴んだしま子の握り拳が血に染まっている。


しま子の拳全体を細い細い針のような枯れ枝が、何十本も突き破っている。


さっき掴んだ枝が爆発・・・いや、増殖した!?


しま子! 手、大丈夫!?


しま子は手から枯れ枝を抜き取り、ポンと投げ捨てる。


真っ白な雪の上の、しま子の血に染まった一本の枯れ枝。


ジャギジャギとハリネズミみたいに、全体が長い鋭い棘で覆われている。


まるで華道に使う剣山のようだ。


こんな物騒なもん、いったいどっから飛んできたのよ!


ざわざわざわ・・・

さっきの音だ。山全体の木の葉がざわめき出す不穏な音。


いや、違う。木の葉が揺れているというよりも・・・


木全体が、この周囲の木全体が身悶えして苦しんでいる!?


ずるり・・・

すぐ近くの木のウロの中が・・・蠢いた。


あたしは眉をひそめて見る。あれ、なに?


ウロの中から何かが出てこようとしている。


ぬるりとした、何かが・・・・・


ずるうぅぅ!


その「何か」の半身がウロから現れた。


あたしはギョッとして硬直する。


その、あまりにも気味の悪い光景に。


あれ・・・・・赤ん坊?