神様修行はじめます! 其の三

なーんか、どっか緊張感ないんだよなぁ、やっぱり。

あたしは心の中で苦笑いした。


「しま子、扉開けてくれる?」

「うあぁぁ~」


しま子が両手で天井部分の扉をグイッと持ち上げた。


扉の隙間から明るい自然光が入り込んでくる。うぅ~ちょっと眩し・・・。


目を細めながら、隙間から外の様子を伺った。


周囲は深い深~い雪が積もった山中だった。


立ち木も何もかも全てがガッポリすっぽりと雪を被っている。


異形のモノの気配は無い。


ここは里の端っこだし、敵さんはどうやら民家のある中央付近に集中してるみたいね。


好都合だ。よしよし。


「しま子、凍雨君、出るよ」


あたし達は出入り口付近の雪を腕で掻き分け、急いで外に出た。


「・・・あっ」


凍雨君が驚いた声をあげ、空を見上げる。


あたしも空を見上げて驚いた。


の色が変色してる。 天空一面、黄緑色の空だ。


あの小瓶と同じ色だわ。

うっわ、黄緑に染まった空って、なんて非常識・・・。


不思議な光景に一瞬あっけにとられて、慌てて我に返った。


珍しい現象に見惚れている場合じゃない。 こっちもすぐに瓶の蓋を開けなきゃ。


時間がズレすぎると効果が発動されないって言ってたっけ。


「凍雨君! 早く瓶! 瓶!」

「は、はいっ」


凍雨君が袖口に手を突っ込んだ。


― ガサガサガサ・・・ ―


木々の葉が盛大に風に揺れる音がした。


さむっ。さすが山は風が強いな。あんなに木の葉が揺れて・・・。


・・・・・


木の葉?


山全体は雪にすっぽり覆われている。木も天辺から足元まで雪に包まれてしまっている。


葉っぱも雪や氷で完全にコーティング状態だ。


風が吹いても、あんなにそよぐ葉っぱなんて、どこにもあるはずが・・・


無い!


とっさに後ろを振り返ったあたしの目前に、鋭く尖った枯れ枝が飛び込んできた。


目玉・・・突かれる!!