集団の先頭に立つ女性があたしに話しかけてきた。


一番年長で20代半ばか、後半くらい。


身にまとう着物の柄は、重ね熨斗の縁起の良い振袖。


漆塗りの高価そうな飾り櫛。手の込んだ細工のかんざし。


日本人形のような顔立ちと、それを充分に意識しているらしい和風な化粧が目立つ。


「お前、あちらへ里帰りしていたようねぇ」

「・・・こんにちは。塔子(とうこ)さん」


一応、あたしは挨拶した。

もっさりと低い声で。


すると背後に控えた女の子達が、さっそく文句を言ってくる。


「里緒! 塔子様、とお呼びしなさいと教えたでしょう!」


「塔子様は、先代の奥方様ご一族に繋がるお嬢様なのよ!」


「まったく礼儀知らずにもほどがあるわ!」


先代の奥方。

つまり、鬼ババの奥方と親戚って事じゃん。


ろくなもんじゃねーわ。そりゃ。


思い切りしらけていると塔子さんが、まぁまぁと女の子達を宥めた。


「しかたないでしょう。里緒は私達と違って、あちらの出だから」


「そうですね、塔子様」


「里緒が私達と違うのは、しかたないですねえ」


「くすくすくす・・・」


口元に手を当てたり、扇で隠したり。


揃ってわざとらしく忍び笑いするたび揺れるかんざしを見ながら、あたしはゲンナリした。


あぁ、急いでるのにまたネットリしたのにとっ捕まっちゃったなぁ。


『門川 乙女会』

この古くさぁいネーミングの集団は、全員が有力者の娘達だ。