神様修行はじめます! 其の三

凄い! いったいどんな素材なんだろう!?


あのコンクリート並みのツラの皮の厚さを簡単に切り裂くなんて!


「・・・来ますわ!」


巨大顔面の集団が上空からみるみる接近してくる。


あたしは慌てて精神集中しようと試みた。


途端に牛車がまたガタガタと派手に揺れまくる。


ダメ! これじゃとても集中できない――!


パンッ!と音がした。


凍雨君が両手で素早く印を組む。


両目をギュッと瞑り、気合を込めて組んだ両手を前に突き出した。


― キィィン! ―


ただでさえ寒い外気がさらに濃縮される感覚。


こちらに向かってくる巨大顔面達の動きが鈍った。


ピシピシと顔面に真っ白な霜が覆い始める。そして、表面に透明な膜のようなものが・・・


あれは・・・氷だ!

氷漬けにして閉じ込めてしまおうとしているんだ!


すごい凍雨君! 頑張って!


― ビシビシビシ! ―


巨大顔面がブルブルと顔を揺すった。


せっかく出来た氷の膜がガラス破片のように砕け散る。

あぁ・・・!


「ぐっ! 数が、多すぎ・・・!」


印を組む手が震えている。

白く滑らかな、少年らしさの残る頬がピクピク痙攣した。


「ぐ・・・あぁ・・・負ける、もんかあ!」


再び濃縮された冷気が異形のモノ達を覆う。


薄い氷の膜が敵の動きを鈍らせた。でもこのままじゃ長くはもたない。


相変わらず牛達は暴れまくり、牛車は今にも引っくり返りそうに揺れまくる。


うわああ――っ!


お岩さんが座席に必死にしがみ付きながら、ふぅぅっ!と息を吐き出した。


その反動で大きく大きく息を吸い込む。

そして・・・


「アンソニーちゃあああ―――ん!!!」


耳も潰れんばかりの大絶叫を放った。